夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 これは運命か。それとも呪いか。

 立花が乞い願っていた再会は、嶺奈が自暴自棄を起こし、自らの命を絶とうとしている最悪の場面だった。

「…………」

「必死だったよ。嶺奈が死のうとしてるのを、黙って見過ごせるはずない。人違いであって欲しいって思ってた。けど、君の顔を間近で見たとき、ああやっぱり、君だ。あの時の、俺を助けてくれた君だって分かったんだ」

 話を続けながら、立花は嶺奈の髪を子供をあやすように、ゆっくりと優しく何度も撫でる。
 
「良平さんの気持ちも知らないで、私、勝手なことばかりして……」

 良平さんの話を聞けば聞くほどに、罪悪感は膨れ上がり、押し潰されてしまいそうになる。

 どうして、感情のままに行動してしまったのか。後悔してもしきれなかった。

「仕方ないと俺は思うよ。誰だって、好きな相手に拒絶されたら、もうどうでもいいやって、全部投げやりになってしまうだろうから。それくらい好きだったんだろ? 阿久津のこと」

 彼に問われ、嶺奈は沈黙する。
 
 良平さんの言う通り、なんだかんだと難癖をつけていても、私は亮介のことが本当は好きだった。

 時間を戻せるならって願ったこともあった。

 だから、現実を受け入れられなくて、優しくしてくれる良平さんに、亮介の面影を重ねて見ていた。

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