夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 空港に降り立ち、外に出ると、冷たい風が頬を容赦なく打ちつける。

 仕事上の名目は大阪への出張ということになっているが、取引先での確認事項を済ませた後は、好きに過ごして構わないと課長から告げられた。

 なら、美緒は何の為に俺の出張に着いてきたのか、今だ疑問でしかない。

 岡田社長は一体何を考えているのだろうか。いや、何も考えてはいないから、こんなことが出来るのか。嘲笑することさえ馬鹿らしく感じる。
 
「寒いな」
 
 冬空を見上げ、白い息を吐き出しながらぽつりと呟く。
 
 その後ろで美緒は何も言わずに、重そうなキャリーバッグを引きずっていた。

 彼女も厚手のコートを羽織っているが、寒さで悴んだ指先を慣らすように何度も動かしている。

「荷物持つから」

 自分より何歩も遅れて、後ろを歩く美緒を見かねて、亮介は彼女のキャリーバッグを受け取ると、再び歩き出す。

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