夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 これから二泊三日を、美緒と二人きりで過ごさなければならないと思うと、少し気が重くなる。

 ましてや、最近の彼女は強引に結婚を迫ってきた時とは、似ても似つかないくらい、性格が変わってしまっていた。

 もしかしたら、これが本来の彼女の姿なのではないかと、思ってしまうほどに、今は口数も少なく、表情も乏しい。

「見たい場所とか、行きたい店はないのか」

 タクシー乗り場に移動して、美緒に問う。
 
「急に言われても……特には」

 亮介の問いに、美緒は戸惑いながら答える。その声も独り言のように小さくて、聞き取り難かった。

「なら、とりあえずホテルに行くか」

 ここで立ち往生していても仕方ないし、長時間、この冷たい風に晒されるつもりもない。

 それに、美緒に風邪でもひかれたら、俺が困る。

 二人はタクシーに乗ると、予約していたホテルへ向かう。その道中で、亮介は携帯で大阪の観光名所を検索していた。

 取引先との仕事は数時間もあれば、直ぐに終わってしまう。残りの時間をどう過ごすべきか、亮介は頭を悩ませていた。

 少しの間、無心でウェブページを眺めていたが、ふと我に返り、亮介は美緒を一瞥する。

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