夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
「もう、終わりにしようと思います」
亮介の戸惑いを遮るように、美緒は口を開き静かに告げる。
「は?」
今まで散々、離婚するのを渋っておいて、一体どういう風の吹き回しなのか。
また、何かを企んでいるのか。
そう思い、美緒を訝しげに見る。
だが、彼女の表情は暗く影を落としたままだった。
「やっぱり駄目だって、分かったから」
「何が」
「……私が、嘘をつくのが耐えられなくなったんです」
「嘘?」
彼女の嘘と言っても、思い当たるのは偽りの妊娠報告のことしか記憶にない。そのせいで、俺は結婚を余儀なくされた。
もしかして、俺が知らないだけで、美緒は他にも嘘をついていたのか。
「私は利用したんです。亮介さんを」
「どういうことだ」
「亮介さんと結婚をする前に私は、お父様に見合いを持ち掛けられていました」
話を区切るように観覧車が一周し終わり、係員に従って、二人はゴンドラから降りると、辺りのイルミネーションを眺めながら歩く。
再び彼女は口を開き、ぽつりと語り出した。