夏の終わりと貴方に告げる、さよなら

「君が、彼より幸せになることだよ」

「幸せ……?」

 幸せって、なんだっけ?

 亮介と付き合っていた時、幸せを感じていたかと問われれば、答えは『否』だ。

 いつも彼の機嫌を窺って、堪えていた。

 仕事で忙しいと言われれば、連絡するのを控えていたし、デートをする時も、人混みが苦手な亮介の為に、本当は流行りのお店に行きたいのに、その気持ちをいつも我慢していた。

 最近は彼の自宅にすら、行くこともなくて、二人で会う場所は、決まって私の自宅かホテルかの二選択しかなかった。

 そこに幸せなんてものは、存在し得ない。

 なら、愛はあったのかと問われても、本当のところ、自分でもよく分からないのだ。

「俺は、その為の手引きをしてあげる」

「例えば、どんな?」

「偽装結婚」

「……っ! 偽装結婚って」

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