夏の終わりと貴方に告げる、さよなら

「何してるのっ!! 君はっ!!」

 掠れゆく意識と視界の中で、怒声が聞こえた。

 誰かに強く腕を引き寄せられ、身体に衝撃が走る。

 濡れた衣服越しに、人の温もりを感じて、ゆっくりと目蓋を開くと、そこには私の知らない男性が、雨でずぶ濡れになりながら、抱き留めていた。

「……なんで。なんで、死なせてくれないの」

 冷えた嶺奈の唇から出た言葉は、相手に対する感謝でもなく、死ねなかったことへの疑問だった。

「バカなこと言うなよ。死んでも何もならない」

「無意味だって言うの……? あなたも、そうやって私を馬鹿にするの」

 抜け殻のようになった嶺奈は、うわ言を呟く。

 私はもう終わりなのに。

 婚約者に裏切られて、見知らぬ人に無様な醜態をさらして、生きてる意味なんて、無いのに。

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