夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 エントランスを抜けると、マンションの近くに黒い乗用車が停めてあるのが見えた。

 きっと、あの車が彼の愛車なのだろう。

 近付くと、彼が運転席から降りて、嶺奈に向かって軽く手を上げた。

「おはよう」

「おはよう、ございます」

 お互いに手短に挨拶を済ませて、嶺奈は彼の車に乗り込んだ。


 車が走り出してから数十分が経過していた。

 途中でコンビニに寄り、立花は珈琲を嶺奈はミルクティーを購入して、今もまだ目的地に移動中だった。

「どこに行くの」

 目的地を言わない立花に、嶺奈は再度問う。

「秘密」

 けれど、彼はその質問に答えず、運転を進める。

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