夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 景色は都会の街並みから、静かで鮮やかな海辺に移り変わろうとしていた。

 嶺奈はふと、ハンドルを握り、真剣な眼差しで運転をしている彼の姿を、ちらりと横目に見る。

 今日の彼は黒縁の眼鏡を掛けていた。
 
 無地の白いカッターシャツに、黒のボトムスという出で立ちで、スーツではない姿に、少し新鮮味を感じる。

「もしかして、スーツのほうが良かった?」

「……どうして、そう思うの」

 唐突に問われ、嶺奈は視線を逸らす。

 私が良平さんの姿と重ね考えていたのは、またも亮介のことだった。

 亮介と良平さんは、見た目も性格も全くタイプが異なるのに、どうしても比較してしまう自分がいるのだ。

 みっともないくらいに、私はまだ亮介に対して、未練を残してる。その事実を痛感していた。

「熱烈な視線を感じるから」

 綺麗な横顔で彼は言い、微笑していた。
 
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