夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 彼はソファに座ると、咥えた煙草にライターで火を灯した。嶺奈は彼が吐き出した紫煙をぼんやりと眺める。

「そう、かもしれない」

 答えてから気付く。

 私は寂しかったのかもしれない。
 でなければ、こんな真似しなかった。

 亮介にだって、『今、会いたい』なんて言葉、言わなかった。違う、本当は言えなかったんだ。

「一つ聞いてもいい?」

「どうぞ。俺に答えられることなら」

「罪滅ぼしの意味を教えて」

 ──どうして、会ってくれたの?

 そう訊ねても、彼はきっと、予め用意していた答えを口にする。分かりきった答えだったから、その質問は、もうしないことにした。

「……それは」

「良平さんは、何を知っているの? ──私に、何を隠しているの?」

 核心に迫るように、言葉を重ねた。
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