夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
「……別に耐えてるわけじゃなくて、ただ、本当に思いつかないだけ」
可愛くない、と自分でも思う。
でも、甘え方を忘れてしまった私には、どう答えたらいいのか、皆目見当がつかない。
「よし、決めた。明日はショッピングに行こう」
そう言うなり、彼は携帯を取り出して、何やら調べものをしているようだった。
「ショッピング? 何か欲しい物でもあるの?」
わざわざ私を同行させてまで、買いたい物とは何だろうか。少し気になる。
「それは秘密。明日になれば分かるよ」
そう言って、彼は優しく微笑んだ。
彼について、最近気づいたことがある。
どうやら彼は秘め事が好きらしい。
彼が口癖のように使う『秘密』という言葉は、嶺奈の心をいつも、ざわつかせる。
けれど、今回の『秘密』は悪いことではないと嶺奈は直感的に思った。