夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 お店に入ると、立花は指輪やネックレスといった、女性向けのアクセサリーを真剣な眼差しで眺めている。

 嶺奈はそんな彼の姿を、一歩引いて見つめていた。

「これはどう?」

 唐突に問われ、嶺奈は返答に困る。

 良平さんの彼女の好みなんて、知らない。
 だから、答えようがない。

 考えあぐねていると、彼はもう一つの商品を指差した。

「じゃあ、これなら似合いそう」

「……良いんじゃないんですか」

 だから、似合いそうと言われても、私はあなたの恋人のことを何も知らないのに。

 チクチクと痛み出したのは、きっと心の古傷せいだ。

「俺は嶺奈の好みを聞いてるんだけど」

 放心していると、少しムッとした表情の彼が、嶺奈を見返す。
 
「え?」

「だから、嶺奈はどういうのが欲しい? それとも、俺からのプレゼントは迷惑?」

 プレゼントって、恋人にじゃないの?

 私にってこと?

 考えてもいない展開に、嶺奈は焦燥した。
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