夏の終わりと貴方に告げる、さよなら

「プレゼントって、恋人にじゃないの?」

 思ったままの疑問を口にする。すると、立花は、一瞬思考が停止したように呆けた。
 
「は? 恋人? 俺、付き合ってる人はいないよ。言ってなかったっけ」

「聞いてないわ。ひとつも」

 どうして、そんなに悪びれることもなく、平然としていられるの。

 確かに勝手に想像して、苛立ってしまった自分にも非はあるけれど、納得いかない。

「妬いてくれたの?」

「し、知らないっ!」

 彼のストレートな物言いに、嶺奈はつっけんどんに返した。

 架空の恋人に勝手に妬いていたなんて、彼には絶対に知られたくなかった。

 嶺奈は羞恥で赤らめた顔を隠すように、そっぽを向いて店を出ようとする。立花は、その腕を掴み、そっと引き寄せると、ショーケースを見るように指示する。

 ショーケースに並ぶ商品の値段は、どれも桁が一つ多い。
 
 こんなに高い物を贈ってもらう理由は無い。

 要らないと、言おうとしたけれど、彼はすでに店員を呼んでいた。

「これにします。サイズ測ってもらって」

 立花は即決し、店員に告げる。

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