夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
「でも、こんなの高すぎるわ」
「お願い。受け取って?」
眉尻を下げて、懇願するような表情をされては、さすがの嶺奈でも無下に出来なかった。
「…………」
そんな顔をするなんて、ズルい。そう思いつつ渋々に頷いた。
店を出ると、彼はお腹が空いたと言い、近場のレストランを探すことになった。
二人並んで歩道を歩いていると、嶺奈が突然立ち止まる。彼女の異変に気づいた立花は振り返り、問う。
「どうかした」
「亮、介……」
嶺奈が見つめる視線の先には、二人と同じように並んで歩いている男女の姿が見えた。
見間違えるはずがない。
幾度も見た、あの後ろ姿。
嶺奈を振り、浮気相手と一緒になることを選んだ、彼の姿を。
隣で微笑んでいるのは、私の知らない女性だった。白いワンピースの裾が風に揺れ、さながら、純白のウェディングドレスのように見えた。
あの人が──。
亮介の結婚相手。