夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 彼が運転をする車内で、嶺奈は独り考える。
 目蓋を閉じても、鮮明に映るのは先ほど光景。

 遠目で見て分かるほどに、彼女はとても可愛らしくて、庇護欲を駆り立てられるような女性だった。

 私とは大違い。

 ワンピースなんて、亮介の前で一度も着たことなかった。

 悔しさより、悲しさが勝ってしまう。

 私は──浮気をされて当然だったのかもしれない。

 今日、亮介と並んで歩く彼女を見て、それを嫌というほど痛感してしまった。弱気になり、ネガティブな感情ばかりが心を占拠する。

 気が付けば、車は見知らぬマンションの前に到着していた。

「ここは……?」

「俺が住んでるマンション」

 嶺奈の質問に、立花は平然とした態度で答える。

 忘れ物でも取りに来たのだろうか。そんなことを思っていると、良平さんは駐車場に車を停めると、私に降りるように促した。

「待って。忘れ物なら私は車で待ってるわ」

「忘れ物? なら、なおさら来てもらわないと」

 ……なんだか、話が噛み合わない気がする。
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