夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 エレベーターを使い、彼が住んでいるという部屋まで付いて歩く。玄関先で遠慮がちに立ち止まった嶺奈を立花は招き入れた。

「遠慮しなくていいから」

 室内には物がほとんど見当たらず、必要最低限の物しか置かれていなかった。テレビも無く部屋は、しんと静まりかえっていた。
 
 彼はミニマリストというやつだろうか。そう思いながら、嶺奈は勧められたソファに腰掛けた。

「お邪魔します……」

 でも、どうして私を部屋に連れてきたのか。理解出来ずに悶々とする。

 そんな嶺奈を気にすることもなく、立花はキッチンに入り、ケトルでお湯を沸かし始めた。
 
「嶺奈は紅茶派だよね。今、用意するから」

 私の好みを覚えてくれていたことに、胸がきゅっとして切なさを感じた。

 彼の何気ない優しさは、いつも嶺奈を戸惑い惑わせるのだ。

「ミルクないんだけど、ストレートでもいい?」

 キッチンから声をかけられて、嶺奈は頷き答えた。

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