夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
『……来週の予定なんだけど。俺、ちょっと用事があって、会えそうにないんだ』
すっかり習慣になってしまった週末の彼との電話。来週は会えないと聞いて、少し残念に思う。
恋人でもないのに、毎週欠かさず連絡をして会ってくれる立花を、嶺奈はいつしか心の拠り所にしていたのだと気付く。
彼の言葉を聞いた嶺奈は部屋のカレンダーを眺める。そういえば、亮介の結婚披露宴も来週の日曜日だ。
偶然に重なったお互いの予定に、そんなこともあると言い聞かせる。なのに、嫌な予感がするのは、この胸のざわめきは何だろう。
『だから、明日は好きなだけ我が儘言って』
「ええ、考えておくわ。それじゃ、明日……」
通話を終えて、ベッド脇のサイドテーブルの引き出しから、先日届いた招待状を取り出す。
明日のことを考えなければならないが、結婚式用のドレスも新調しなければいけない。
明日、それとなく良平さんに伝えてみようか。
披露宴に出席すること自体は、反対はされないだろうし、快く送り出してくれると思う。
問題は、その相手だ。
招待状が来たからといって、わざわざ元婚約者の披露宴に行くのは、自らの傷口を広げて、自傷するようなもの。
そんなことを伝えてしまったら、絶対に反対されるし、馬鹿だと叱られるに違いない。
だから、彼には言えない。
嶺奈は頭を振り、考えをリセットした。