夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 お店に到着し、受け取った指輪のサイズを店員の前で確認する。

「薬指にしたんだ」

 その様子を嶺奈の隣で見ていた彼に言われてから思い出す。

 指のサイズを測ると言われたとき、嶺奈が何気なく差し出したのは左手で、店員も確認することなく、当たり前のように薬指のサイズを測っていたのだ。

 あの時、せめて右手を差し出していれば……。そう悔恨しつつ、嶺奈は慌てて彼に弁解する。

「薬指にしたのは深い訳があったわけじゃなくて──」

「後で指に嵌めてあげる」

「だ、だから!」

「でも、サイズを測って注文したんだし、薬指以外の指には合わないんじゃないかな」

 動転している嶺奈とは対照的に、彼は冷静だった。薬指に嵌める指輪の意味を、彼は知らないはずがない。

 けれど、動揺しているのは自分だけだと思うと、妙に恥ずかしくなってしまった。
 
「とても良くお似合いですよ」

 店員はそう言うと、穏やかな笑みを浮かべて、二人のやり取りを見つめていた。

 
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