夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 指輪を受け取るだけで、こんなに疲れるとは思わなかった。もう、ドレスなんて選ばなくていいから帰りたくなる。

 数店舗のブティックを巡ったものの、結局、気疲れした嶺奈はドレス選びを適当に済ませた。彼が運転席で少し不服そうな表情をしているのは、ドレス選びにもう少し時間を使いたかったからだろう。

「嶺奈に似合うドレス、他にもあったと思うけど」

 帰り道、立花は運転をしながら独りごちる。
 
「あれで十分よ」

 嶺奈は彼を諌めるように答えた。

 それにしても、彼が私に対して、ここまで尽くす理由は何だろうか。

 やはり、疑問に思う。恋愛感情にしては少し、おかしくも感じる。

 その違和感を彼に聞いてみても、きっと、簡単には答えてはくれない。嶺奈はそのことを知っていたから、敢えて何も聞かなかった。


 ──その選択が間違っていたのか。今考えてみても、答えなんて私には分からなかった。


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