夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 ゆっくりと目蓋を開くと光がやけに眩しかった。視界がぼやけて、うまく定まらない。嶺奈の瞳には、クリーム色の天井が映っている。

 ここは、どこだろう。

 ぎこちなく視線を動かす。身体の自由は利かず、戸惑う。けれど、自身の左手には人の温もりを感じた。誰かが私の手を大きな手のひらで、まるで壊れ物を扱うように優しく包み込んでいる。

「嶺奈?」

 聞き覚えのある声に、脳がゆっくりと覚醒し始める。

 この声は、良平、さん……?

「良かった……目が覚めて……。医師を呼んでくるから、待ってて」

 彼は目覚めた嶺奈の様子に安堵すると、返事も聞かずに病室を離れた。

 医師、ということはここは病院だろうか。披露宴会場で倒れた後の記憶がない嶺奈は、自分がどうして病院にいるのか解らずにいた。

 ベッドに横たわったまま軽い診察を受ける。嶺奈の病状を立花は心配そうに聞いていた。


「心労が重なって倒れたんだ」
 
 今だ口を開くことの出来ない嶺奈に代わり、立花は酷く沈んだ様子で、一方的に話を続ける。

「ごめん……」

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