夏の終わりと貴方に告げる、さよなら

「私が死んでも誰も悲しまない。むしろ、喜ぶんじゃない?」

 そうだ。亮介にとって、私は邪魔者だった。
 そんな、私が死んだら、むしろほっとするに決まってる。

 そして、何事もなかったかのように、振る舞って、浮気相手と結婚して幸せな家庭を築くのだろう。

「何があったのかは知らないけど、そんなこと、軽々しく言わないでくれ。……それに、悲しむ人なら居るよ」

「それって誰? 親? 生憎だけど、両親とは折り合いが悪いの。だから、私のことを思ってくれる人なんて誰もいない」

 嶺奈は昔から両親との折り合いが悪かった。
 厳格で仕事一筋の父親と、キャリアウーマンの母親。

 一人っ子だった私は、いつも寂しくて。

 学校から家に帰っても、仕事尽くめの両親と一緒に食卓を囲めることは、ほぼなかった。だから、スーパーやコンビニのお弁当を買って、独りで食べていた。

 今思えば、それでよく生活出来てたなと思う。
 
 高校を卒業した後、実家から遠い都内の大学に通うことを決めたのは、両親と距離を置きたかったから。

「俺がいる。俺が悲しむよ。君が死んだら」

「今日会って、何も知らない相手を?」

 そんな、馬鹿な話有るわけない。

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