夏の終わりと貴方に告げる、さよなら

「亮介……。どうして、ここに」

「いや、嶺奈こそ……」

 気まずい空気が二人の間に流れ、互いに沈黙する。

 亮介と再会したのは、合鍵を返して貰った日が最後だった。彼はあの日を境に、一切の接触を計ってはこなかったのだ。

 だから、驚いた。

 よりによって、この薔薇園で再会してしまうとは思わず、思考が固まる。

「良平は?」

 亮介は躊躇いがちに問い掛ける。

「仕事」

「そうか……」

 良平さんは亮介と同じ営業課と言っていた。なら、亮介も仕事なのでは? と、嶺奈は疑問に思った。けれど、聞きたい気持ちを我慢して、無言を貫く。

 その態度に拒絶の意思はないと悟ったのか、亮介は小さくため息をつく。

「そっち、行ってもいいか」

「ええ……。どうぞ」

 嶺奈の許可を得て、亮介は彼女の隣に立ち、薔薇を見下ろす。

 不意に思い出したのは、初めて二人で薔薇園に訪れたときのことだった。

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