夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 嶺奈が覚悟を決めた日の夜。良平さんは珍しく定時で帰宅した。

 二人で静かに夕食を済ませると、彼がキッチンからよく冷えたワインボトルを手にして、リビングに戻る。

「嶺奈って、確か、お酒苦手だよね」

「ええ、甘いカクテルなら飲めなくもないけど」
 
 リビングのソファに座り、ボトルをテーブルに置くと、慣れた手つきでコルクを外す。

 ワイングラスに注がれた濃い葡萄色は、醸造酒特有の甘い香りがして、この香りだけでも酔ってしまいそうだった。

「なら、嶺奈用にカクテル作ってあげるよ」

「作れるの?」

「と言っても、炭酸水で割るだけの簡単なものだけど。飲みやすくはなると思うよ」

 そう言って、彼はあらかじめ用意していたグラスにワインと炭酸水を入れると、軽く混ぜ合わせた。

 濃い葡萄色をしていたワインは、淡いピンクに変わり、炭酸水の粒子が、グラスの中で弾けては消える。

「飲んでみて」

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