夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 出来上がったばかりの彼特製カクテルを一口飲んでみると、ワイン特有の渋みが炭酸水によって和らいでいて、飲みやすかった。

「美味しい……これなら、私でも飲めるわ」

「それは良かった。でも、飲み過ぎたら駄目だよ」

 優しく咎める良平さんに、不意に切なさを覚えて、視線を逸らした。

 こんな風に、まともに会話を交わすのは、とても久し振りで、どうしたらいいのか、分からなくなる。

 自然と口数が減ってしまうのは、彼に対して遠慮と罪悪感を抱えていたからだ。

 そんな嶺奈の様子を察して、彼は問い掛ける。
 
「……何かあった?」

「え?」

「今朝からぼーっとしてたし、理由も話してくれなかったから」

「……それは」

 彼に問われて、脳裏にちらついたのは亮介のことだった。

 薔薇園で私と亮介が再会したことを良平さんは知らない。そこで、私達がどんな会話をしていたのかさえ、彼は知るよしもない。
 
 けれど、言えるわけがなかった。今、言ってしまったら、私は良平さんをこれ以上ないくらいに、酷く傷付けてしまうと分かっていたから。

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