夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
「ちょっと……疲れてるだけだから、平気よ」
咄嗟についた嘘は、彼の目をうまく誤魔化せているだろうか。
緊張と不安で喉が渇き、嶺奈はカクテルを勢いよくあおる。けれど、炭酸の刺激が喉をついて、むせてしまった。
「……っ」
「一気飲みなんかしたら、酔いが回るのが早くなる」
彼は嶺奈の行動に驚き、僅かに残ったカクテルのグラスを取り上げた。
動揺を悟られないよう振る舞う度に、空回りをして彼に心配をかけてしまう。
「ご、ごめんなさい。とても美味しかったから、つい」
「お酒は時間をかけて、ゆっくりと楽しむものだよ。さっきみたいなことをするなら、嶺奈にはもう飲ませられない」
再度、彼に咎められて嶺奈は目蓋を伏せる。なんだか、身体が熱く感じてしまうのは、慣れないお酒をあおってしまったせいなのか。
思考が徐々にぼやけて、急激な眠気に襲われる。
「嶺奈、本当に大丈夫? 今、水を持ってくるから待ってて」