夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 薔薇園で再会した日以来、亮介からは何の連絡もなかった。その間に数ヶ月が過ぎて、季節は年の瀬に迫りつつあった。

 不安が無いわけではない。けれど、自分から連絡出来ないのは、良平さんに対する引け目と、亮介の忠告を守るためでもあった。

 私から連絡をすることで、亮介が不利になってしまうのなら、そんな軽率な真似は出来なかった。

 一度だけ、良平さんに会社での亮介の様子を聞こうと考えたけれど、すんでのところで思い止まった。

 そんなことを聞いてしまえば、不審に思われてしまうし、何より、良平さんは亮介に対して悪感情を抱いている。

 彼の逆鱗に触れるのだけは避けたかった。

 やっぱり、あの日の亮介の言葉は嘘だったのかもしれない。一時の感情と薔薇園という非日常の空間に流されて、また騙されただけかもしれない。

 それでも、亮介を信じたいと思ってしまう自分がいるのも事実で、ジレンマに囚われた嶺奈の心の天秤は、いつまでも不安定に揺れ動き続けていた。



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