夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 週末の夜。
 
「嶺奈、クリスマスの日は予定ある?」

「平日だから仕事。それ以外は何も」

 立花に問われ、嶺奈は逡巡することなく答えた。

 今まで特別仲の良い友人がいなかった嶺奈は、クリスマスを誰かと一緒に過ごすという経験をしたことがなかった。

 大学生時代のときに、一度だけクリスマスパーティーに誘われたことがあったものの、バイトに明け暮れていたせいで、翌年からは声すら掛けられなくなってしまった。

 そういえば、亮介と付き合っていたときも、特別なことは何もしなかったことを思い出す。

 二人でショートケーキを食べたくらいだ。

 だから、クリスマスと聞いてもいまいちぴんとこないし、どうして皆が浮き足立つのか理解出来ない。

「なら、外食でもしようか」

「良平さん、仕事で忙しいんじゃないの?」

「だいぶ落ち着いてきたし、平気だよ」

 一瞬、無理をしているのではないかと思った。けれど、彼はそんな嶺奈の心配を掻き消すように言葉を続けた。

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