夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 亮介が指定した場所は、お互いの生活圏から少し離れた飲食店だった。

 良平さんには帰宅が遅れると連絡を入れて、最寄り駅に向かう。

 後ろめたさがないと言えば嘘になる。

 けれど、どのみち亮介には近況を聞かなければと思っていた。だから、嶺奈はこのチャンスを逃さないように、駅へと向かう歩みを速めた。

 飲食店に到着すると、彼はすでに個室に通され、嶺奈を待っていた。

「ごめんなさい。遅れた」

「大丈夫。俺も今着いたから」

 亮介の言葉に嘘はないようで、テーブルに置かれていた伝票は、現在の時刻が印刷されていた。

「何か食べるか?」

「飲み物だけにしておくわ」

 彼からメニュー表を受け取り、嶺奈はソフトドリンクを注文する。

「それで、話って何?」

 良平さんを独り自宅で待たせている以上、あまり長話は出来ないと思い、嶺奈は率直に訊ねた。

「……離婚調停を取り止めることになった」

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