同居で始まるリトライラブはありですか?
荷物をまとめて、颯の家に向かった。

幼馴染といっても、颯の家に行くのは数年ぶりで、少し緊張しているのか、手に汗が滲んだ。

「とにかく、愛想良く、関わらないように!!」

そう決めて、インターホンを押した。
そして聞こえた2ヶ月ぶりの、懐かしい声。

ガチャッ

扉が開いて出てきたのは、もちろん元彼。
貼り付けたような優しい笑顔に、私も精一杯の笑顔で返すと、颯は急にお腹を抱えてしゃがみ込んだ。

「え?お腹痛い?大丈夫!?」

救急車!?いや親に連絡!?焦ってうろうろしていると、腕を掴まれた。

「落ち着けって。ただ面白かっただけだ。
お前のぎこちない変な笑い方が。」

ブチッ

まだ笑いをこらえるように言う颯のその言葉に、何かが切れる音がした。

「こっちは心配してやったっていうのに!
もう颯なんか知らない!お邪魔します!!」

荷物を持って家へ上がり込んだ。

「初~ごめんって!!!」

リビングに着くと、鼻にふわっと懐かしい香りが入り込んだ。

「ああ、颯の家だ。」

変わらないな。颯の家はいつものこの、少し甘い爽やかな香りがする。
幼いころの懐かしさに浸っていると、颯の声が聞こえた。

「荷物こっち。初の部屋、用意してる。」

颯の指に指された部屋に入る。

「えっっ、可愛い!!!!」

思わず声が出た。白とピンク色で揃えられた私好みの、可愛らしい部屋に。
颯に女兄弟はいない。なんでこんな部屋が?

「どうしたのこの部屋!?」

颯はニヤッと笑った。

「今日の為に母さんと頑張ったんだぜ?
どうせ生活するなら初に喜んで貰える部屋にしようと思ってな。好みなんて把握済み。」

私の為にこんなに可愛い部屋を作ってくれた人に、関わらないように生活しようなんて、失礼だったかな。

そんな事を考えながら、部屋を整理、颯はソファの誇りを取ってくれている。

「この棚、少し動かしてもいい?」

「え?ごめんもう1回言って。」

家具の移動の質問したけど、声が小さかったのかな。
少し近ずいて、もう一度声を出す。

「だーかーら、この棚を…ってキャッ!?」

その瞬間、床に置いていたぬいぐるみを踏んづけて足がすべった。

目の前のソファに落ちるように手を伸ばし、ぎゅっと目を瞑った。
絶対怪我する……!!!
落ちた先は、床では無かった。

「あれ…?痛く、ない…?」

何かの上に乗っている事に気づいた私は、そっと目を開ける。
その時に、目を開けた事を後悔した。
なぜって??だって、目の前に颯の顔が、。
ばちっと目が合った。
それはあまりにも綺麗な、黒い瞳と。
って、見つめてる場合じゃない!!

「ごめんこんなつもりじゃ…!!」

どうしよう…。とりあえず降りないと!!!

「初、大胆だな。どうしたの?」

颯はそう言って手の先を見る。
え?何?手になんかあるの…?
おずおずと手の方を見ると、私と颯の手が繋がってるではありませんか!!

「!?ごめん今どくから!!!」

もう!!なんでこうなるの!!
急いで降りると、颯は少し残念そうな顔をした……気がした。

「て事で、部屋もある程度出来たし、1ヶ月間よろしくな。」

「うん。よろ、しく…。」

って、よろしくできる訳ないじゃない!!
元彼を押し倒す元カノがどこに居るってのよ…。
それにしても、颯、相変わらずカッコいい顔してたなぁ。

「とにかく、さっきのは忘れよう。
でもこの1ヶ月、大丈夫かな…。」

そんな心配をしながら、部屋のドアを閉めた。



< 3 / 7 >

この作品をシェア

pagetop