BeAST
「確かに、灯織が言わんとしている理由も、その通りだ。」
俺を見る、皇。
「でも、最初に灯織にキスした時は、ただ純粋にしたかっただけだ」
……なんか数名の女子が倒れた音がする。
そりゃあ、こんな顔面国宝みたいなやつがそんなセリフ吐いちゃぁな。
「そのことも、灯織は分かってる」
好きじゃない、そう言ったのは暗にもう一つの理由を知っていると伝えようとしただけ。
昨日の行為の前は俺は柿谷と関わってなかったしな。
「だろ」
俺の事を、また、熱のある目で見る。
「はぁ、残念ながらなぁ。…与坂、ありがとうな怒ってくれて。お前やっぱかっこいいわ」
「ひ、おり…」
「好きでもねえやつにキスされそうになったら、ビンタしろって言ってくれてたのに、実行不可だったんだよ。でも、礼が助けてくれたから、未遂だし、レイプ魔って呼ぶのはやめてやってくれ」
クスクス笑えば、バチンッと頬に痛みが走る。
「笑い事じゃない」
耳がキーンとする。
あれ、俺、ビンタされた?
「怖いよ、灯織」
あ、もっと、泣かせた……
「暴力振るわれて飛び降りたって聞いた時も、今襲われそうになったって聞いた時も、なんで灯織は率先して笑うの」