BeAST




俺はまだ、分かってない。


大切にされる、重みを。


環や耀介からの愛と、こいつらからの愛。


「いつもそんな、ヘラヘラ笑わないくせに……!」


ボロボロ泣く与坂に、頭が追いつかない。


「あたし、全然、分かってなかった。分かってるつもりでいた。飛び降りた時は、心配させないようにって笑ってるって思った。多分それもあるんだろうけど、それより……怖いくらい、灯織は自分を大切にしない人なんだって、今分かったよ」



《 なんでお前なんだ 》


今、かよ……


「ぅ"……ぐ」


気持ち悪い


口元を手で覆う。


《 お前は誰にも愛されない 》


声。

いいや、もう声色なんて忘れた。

色んな声が混じった、気持ち悪い声。


「…っ、はぁっ、ぅ、っふ」



気持ち悪い
気持ち悪い
気持ち悪い



「前と同じか」


礼は、そうか、知ってるのか。


俺の肩を支えて、急ぐ。



《 許さない 》



「ぉえ"…かはっ」


便器にしがみつき、礼に背中を摩ってもらいながらせり上がるものを全部出す。


「はぁっはぁっはぁっ」


「大丈夫、全部吐き出せ」


もう、胃に何も無い。




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