BeAST




「ごめ……れ」


「謝るな。それよりもう出なさそうか」


肩で息をしながら頷く。


「水持ってくる」


個室のドアが、バタンと閉まる。


あぁ、与坂、自分責めてないといいな……

タイミング、悪すぎだろ…



なんのタイミングで……


いや、分かる気がする。



俺は自分が大切にされていることを自覚すればするほど、思い出すんだ。



必要とされるべき人間じゃないことを。



礼が来てくれて、口をゆすいで、少し落ち着く。


「保健室、行くか」


「いいや、大丈夫」


「……前は、今よりもっと苦しそうだったよな」


狭い個室で、2人でしゃがみこんで話す。


「……良くなってる、はず」


「お前が荒れてた理由と、同じなんだろ」


「ん」


礼は、スクッと立ち上がり、俺の頭をワシャワシャと撫でる。


「甘えたいならまた抱きしめさせてやってもいいぞ」


小馬鹿にしたような声色で話す礼。


「その節はどーも」


ケラケラ笑いながら、俺も立ち上がる。


「次の授業なんだっけ」


「数学」


「あー、課題やってねえわ。授業中終わらすかー」


「そこそこ難しいぞ、あれ」


「余計ダルいな。幸大にやらせるか」


「それもあり」


そんないつも通りの会話をして教室に戻る。



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