BeAST




「どう。苦しい?」


仕事をしながら、俺に聞く耀介。


「…難しい」


「そう」


聞こうとしない。

俺に。


今が、俺の一番変わるべきタイミングなんだと思う。


「お前を変えてくれる人間が現れればな」


環に、ここまで変えてもらったのに、まだ俺は俺の力で変わることが出来ないんだろうか。


「辛い時は、辛いって言いなよ。あと2年と少し猶予はあるんだから、あんまり飛ばさないように」



「……そんなに早くは解決しない。けど、試したいことがある」



ふぅ、と息を吐いて、仕事用のメガネを外して俺の方を見る耀介。



「言ってごらん」



「丞さんの連絡先、教えてくれ」



俺の事をじっと見て、何かを確認する。


そして、スマホを出して操作し始める。

こっちは、環の命がかかってる。



俺が壊れない限り、死なない限り、やれることはやる。


ただでここにいるわけじゃない。



「本当に危ない時は、すぐに連絡すること。分かった?」



「自分の力には自信ねえからな。ちゃんと事前に連絡する。」



丞さんの連絡先を教えてもらい、保健室を出る。


出て直ぐに、皇と鉢合わせした。



「皇」


皇は無表情。変わらず、俺をじっと見る。


「関係の浅い俺が言うのもなんだが、柿谷のことよろしくな」


「……何するつもりだ」



< 107 / 337 >

この作品をシェア

pagetop