BeAST
「どう。苦しい?」
仕事をしながら、俺に聞く耀介。
「…難しい」
「そう」
聞こうとしない。
俺に。
今が、俺の一番変わるべきタイミングなんだと思う。
「お前を変えてくれる人間が現れればな」
環に、ここまで変えてもらったのに、まだ俺は俺の力で変わることが出来ないんだろうか。
「辛い時は、辛いって言いなよ。あと2年と少し猶予はあるんだから、あんまり飛ばさないように」
「……そんなに早くは解決しない。けど、試したいことがある」
ふぅ、と息を吐いて、仕事用のメガネを外して俺の方を見る耀介。
「言ってごらん」
「丞さんの連絡先、教えてくれ」
俺の事をじっと見て、何かを確認する。
そして、スマホを出して操作し始める。
こっちは、環の命がかかってる。
俺が壊れない限り、死なない限り、やれることはやる。
ただでここにいるわけじゃない。
「本当に危ない時は、すぐに連絡すること。分かった?」
「自分の力には自信ねえからな。ちゃんと事前に連絡する。」
丞さんの連絡先を教えてもらい、保健室を出る。
出て直ぐに、皇と鉢合わせした。
「皇」
皇は無表情。変わらず、俺をじっと見る。
「関係の浅い俺が言うのもなんだが、柿谷のことよろしくな」
「……何するつもりだ」