BeAST
初めて
分からないことを考え続けた。
でも、分からなかった。
ここで立ち止まっても、何も始まらない。
時間は有限だ。
胸に手を当て、鼓動を感じる。
「いつ止まっても、おかしくはない」
当たり前のことなんて、この世にひとつもない。
考えた。
皆から大切にしてもらってんだなって、それがどんだけありがたいことなのかって。
でも俺は、俺のために生きてるわけじゃないんだ。
「丞さん」
街の中心。
待ち合わせ場所に最も使われる場所で、スマホを弄るその人は逆ナンの女に囲まれてて。
仕方がないから名前を呼んだ。
「おっ、灯織〜…」
面白いくらい、分かりやすく固まる丞さん。
「ちょっとぉ、男の子じゃないじゃん」
男と待ち合わせ、って言ってたんだな。
逆ナンの女達は去っていく。
「なんか、悪い」
「え…」
「今日は、こっち」
「こ、……っちって、俺初めて見る、ケド」
同じ髪色の胸までの長さのエクステを、毛先だけ内巻きに。
タートルだけど、鎖骨の部分が露出している黒のニット。
白のレザーで、ミニのタイトスカートに、黒のブーツ。
「急だったのにさんきゅ」
「いや、それは別に」
「今日の出費は俺が持つから、女は諦めろ」