BeAST
丞さんは、それを見下ろし、前を向き直し髪をかきあげて、ふぅ、と息を吐く。
その仕草は、いやに色気を帯びていて。
そらモテるわ、と納得できた。
「すげえ腰にクる」
話すことは、変わらずアホっぽい。
「言葉のセクハラは今日は許すから。ね?」
小首を傾げれば
「これだけ聞いてもいい?」
「何?」
「今日の下着何色、ったぁ!」
脇腹を殴る。
「お腹空いた。早くどっか連れてって」
「言葉のセクハラは許すって言ったよね?!」
「……警察行く?」
「ごめんなさい」
ふざけたアラサーと会話しながら着いたのは、高層ビルの、夜景の綺麗なレストラン。
「予約してたの?」
「うん。」
「ここに、男二人で?」
俺が男の格好で来た時のことを考えると、かなり寒い。
「男二人だって女二人だって、良いところで美味しいもの食べるにこしたことはないって」
ああ、そうか。
「年上マウントを」
「違う」
俺の言動を呆れたように否定する丞さん。
「冗談。色々考えてくれて、ありがとう」
これは、演技なしでお礼を言う。
「いいえ。どうせバイトとお見舞いで、ちゃんと遊べてないんでしょ」
やっぱりそういうことか。
「全部、私のやりたい事だから幸せだよ」