BeAST





「わぁ、赤くなってる。すいませーん、冷やすものください!」


カウンターの従業員に声をかけてくれる丞さん。


「ごめん、かなりいい音……、ふっ」


笑った声が聞こえて、睨み上げる。


「いいよ、って許そうと思ったけど、笑ったから許さない」


「ふ、だって、ミキのそんな困り眉、見たことない…ふふっ、可愛すぎ」


「めっっっちゃ痛い。頭ぶち抜かれたかと思った」


「あははっ、ミキがデコピンしろとか言うから〜」


かなり笑う丞さん。

なんか、俺までこの状況が馬鹿らしくなってきた。


「ねえ、脳みそ出てない?」


「ギリ!」


力んでその2文字を俺に向かって言い放つ丞さんに、俺も吹いてしまう。


「そんな力んで言うことかよ」


ケラケラと二人で笑っていれば、


「…その、ごめんね?俺が丞さんに話しかけたから」


俺の様子を申し訳なさそうに伺うその人は、一目で、俺が会いに来た人だと分かった。


「そんな、謝っていただくようなことじゃないですよ。お恥ずかしい」


あはは、と照れ笑いをする。


「ほらミキ。これで冷やしな?」


氷の入った袋をタオルで包んだものを渡される。


「わあ、すみません、用意していただいてしまって」


カウンターの人に頭を下げる。




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