BeAST



「大丈夫大丈夫。殴り合いとかよくあるし、こんなの可愛いもんだよ」


そう笑ってくれた。


「ありがとうございます」


「それにしても、偉く丞と仲が良いんだね」


そんなに関係値高くはないんだけどもね。


「俺の未来のお嫁さんだから」


てへ、と笑う隣のアラサー。


「去勢してから言え」


てへ、と同じように笑う俺。


「え、去勢したら結婚してくれんの?」


「言えって言ってるだけで誰も結婚するのは言ってない。ってそうじゃなくて」



放置されてるその人を手で差す。



「あ、ごめんごめん。久しぶりだな、柊吾」


話し方が、男への口調。

いつもの俺への口調だ。


「お久しぶりです。今日はどうしてここに」


「この子が夜遊びしたいっていうから連れてきたんだよ」


ふわっと笑う丞さん。


「そうなんですね。でも、もっと治安良いクラブの方が楽しめたんじゃないです?」



「はは、オーナーがそんなこと言う?」


「私、クラブとかよく分からなくて。たまたまこのクラブを知っていたので丞さんにお願いしたんです」


「そう」


俺の様子を静かに伺うその人。


「この人はここのオーナーで、俺の高校時代の後輩の、



柿谷柊吾(かきたにとうご)」



柿谷慎矢の、兄。




< 121 / 337 >

この作品をシェア

pagetop