BeAST
「大丈夫大丈夫。殴り合いとかよくあるし、こんなの可愛いもんだよ」
そう笑ってくれた。
「ありがとうございます」
「それにしても、偉く丞と仲が良いんだね」
そんなに関係値高くはないんだけどもね。
「俺の未来のお嫁さんだから」
てへ、と笑う隣のアラサー。
「去勢してから言え」
てへ、と同じように笑う俺。
「え、去勢したら結婚してくれんの?」
「言えって言ってるだけで誰も結婚するのは言ってない。ってそうじゃなくて」
放置されてるその人を手で差す。
「あ、ごめんごめん。久しぶりだな、柊吾」
話し方が、男への口調。
いつもの俺への口調だ。
「お久しぶりです。今日はどうしてここに」
「この子が夜遊びしたいっていうから連れてきたんだよ」
ふわっと笑う丞さん。
「そうなんですね。でも、もっと治安良いクラブの方が楽しめたんじゃないです?」
「はは、オーナーがそんなこと言う?」
「私、クラブとかよく分からなくて。たまたまこのクラブを知っていたので丞さんにお願いしたんです」
「そう」
俺の様子を静かに伺うその人。
「この人はここのオーナーで、俺の高校時代の後輩の、
柿谷柊吾(かきたにとうご)」
柿谷慎矢の、兄。