BeAST




「人を、傷付けることを選ぶ人間。あ、そんで慎矢と皇にも会った。ハルとの関係軽く話した。」


『オーバーワークだよ、灯織』


呆れたように話す耀介。


「ありがとう、耀介。耀介に、この仕事をもらわなかったら、一生動かなかったかも。仕事だからやらなきゃって思える。」


耀介は、俺の事を分かってる。

俺を拾った理由は未だに分からないけど、それでも、俺が口でなんと言おうが分かってる。


「ハルにはまだ、黙っといて」


『分かった』


_____



白のニットデザインのチューブトップ。ハイウェストのスリットの入った、白地にベージュの花が描かれているロングスカート。

ショート丈で、袖がバルーンぽくなっているカーディガン。

黒のブーツに、ピンクゴールドの細めのチェーンネックレスと人差し指にリング。両耳に小さいピンクゴールドのピアス。



ノーメイクにこれはキツいからマスクをする。


カランカラン、と昨日も来た店内に入る。


運良く、出てきたのは葉賀さん。


「いらっしゃ…いませ」

俺を見て、困惑している。

ピンクの包装に入ったチョコを手渡す。


「葉賀さん、昨日ぶり。これ、あげる」


オクターブ上の声。

ビクビクっと身体を震わせる葉賀さん。

スッと耳元に口を近付け、


「俺が女だってこと、一応秘密なんすよ。これ口止め料ってことで」




< 162 / 337 >

この作品をシェア

pagetop