BeAST
「へっ!?は、はい!」
「ふふ」
口元を片手で隠し、笑ってみせる。
「あ、あの、真壁さん、昨日の個室にいらっしゃいます…!」
「そう。ありがとうございます」
歩き方も女性らしく。
少し早くなる鼓動を抑えながら向かう。
部屋の扉は開いていて、一応ノックするけど、誰もいなくてとりあえず入る。
「綺麗だね」
後ろから声がして振り返ろうと思った時には、もう、いつもの香りに包まれて。
腰に回された腕と、首筋に埋められる顔。
前の鏡に、その様子が映る。
今日は、チューブトップだから、少し腹出てるし、丞さんが触れているところ全部素肌。
丞さんが、俺の顔見てないから、今はいいかな。
嬉しくて、自然と口角が上がる。
あーーー、俺キモいなぁ。
「っ、わあ!」
そんな声が聞こえて、ポンポン、と丞さんの腕を叩く。
「葉賀さん、凄い声上げてるから」
ぐっと腕の力を入れて、すぐに弛めてくれる。
「座ってて」
「ん」
丞さんに言われた通り、カバンを置いて椅子に座る。
「ご、ごめんなさい、お邪魔してしまって!そんなつもりじゃなかったんですけど」
焦って俺に謝る葉賀さん。
丞さんは1度部屋を出ていった。
「気遣わせてすんません。もう当分ここ来ないし気にしないでいーっすよ」