BeAST
「とか言って、女の子助けてその気にさせちゃうんでしょ、灯織のことだから」
「お礼言われたら、いつもの事だからって言うようにしてる」
「うわあ、残酷だね」
「……かもな。最初から遊びですって言ってた方が、良いのかもな丞さんみたいに」
「……」
「後々傷つける可能性があるなら、最初に言っておいた方が良い。最初に傷つければ、もう近寄ってこない。それでいいんだよな」
丞さんは黙る。
丞さんは傷付きたくないから、本命を作らない。
それを分かってるから。
「次、髪セットするね」
「ん、よろしく」
刻々と、終わりが近づく。
「丞、少しいいか」
和さんが呼びに来る。
丞さんはそのまま部屋を出ていく。
ふう、と息を吐く。
「すんません。息詰まりますよね」
葉賀さんに話しかければ、フルフルと首を横に振る。
「俺、丞さんのこと好きなんすよ。昨日丞さんに好きだって言われてすげえ嬉しくて。でも俺は今日、他の男と飯行く。その準備を丞さんにわざわざ頼んだ。酷い女っすよね」
鏡に近付いてメイクを見る。
「な、んで、他の男性と?」
「んー、難しいんすけど。心臓移植をしないといけない男がいて、その男を助けるために手助けをしてくれる男がいて。手助けをする条件として、仲直りさせなきゃいけない男が二人いて。その仲直りをさせるために、更生させなきゃいけない男がいて」