BeAST



口に出すとかなり面倒な図が出来上がるな。



「つまり、俺が救わなきゃいけない男がいっぱいいるんすよ。中には俺を好いてるやつもいれば、襲おうとしたり、殴ったり蹴ったり、殺そうとしたりするやつもいる。それでも俺は、救いたい。」


俺のしたいことは、何よりも比べようもないくらいの、ワガママだ。


「丞さんの過去は知らないけど、丞さんのことを1番に大切にして、幸せにしてくれるような人じゃなきゃ俺が許せない。俺が丞さんのそばに居ることなんて、以ての外」


自分に言い聞かせる。

じゃなきゃ、丞さんの顔を見るだけで、声を聞くだけで揺らぎそうになる。


「今日、丞さんが思う、1番綺麗な俺にしてくれって頼んだんです。」


最初で最後のワガママ。


「葉賀さん。俺、綺麗?」


葉賀さんの方を振り返り、ニコッと笑う。


葉賀さんはとっくに泣いてた。

優しい人だな。


「うちのスタッフ泣かしてんの?」


丞さんが戻ってきた。


「俺の綺麗さに感動してくれたらしい」


「まあそれは仕方ねえだろ。俺がメイクしてるんだから」


「自己評価高」


「じゃなきゃ、やってらんないでしょ」



いつも通りに会話をする俺たちを見て、耐えられなくなったのか、すみませんと言って部屋を出ていった葉賀さん。




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