BeAST
「ごめん。俺子供過ぎ」
自分に言い聞かせたかっただけだ。
葉賀さんに辛さを分け与えた形になってしまった。
「子供はそんなにしんどいこと考えないよ」
話、どっから聞いてたかな。
ま、どこからでもいいけど。
「ほら、今は綺麗になることに集中して」
肩をぽんと撫でる丞さん。
「ん」
コテで全体的に巻いて、片方に流す。
前髪はかきあげ風に。
最後に、白のラッピングの小箱を渡される。
「……何、これ」
「開けてみて」
片付けをしながら、そう呟く丞さん。
開けてみれば、ブランド物の香水。
「それ、あげる。今日も着けていきな」
「え…」
「メンズ用だけど、香りは女の子でも使いやすいと思うよ。…俺と同じやつだから」
ぎゅうっ、と胸が苦しくなって、目頭が熱くなる。
カタカタと手が震える。
「18時、間に合わなくなっちゃうよ」
こんなの、行きたくなくなるじゃん。
震える手で、香水を手首につけ、くびにもつける。
香水を箱に戻して、カバンにしまう。
立ち上がり、鏡を見る。
しっかりしろ、俺。
なんで、俺が振られたみたいな顔してんだ。
「俺の1番好きな香り。ありがとう、丞さん」