BeAST
部屋を出て、会計をしてもらう。
「葉賀、泣いてたけど」
「ごめん、それ俺。代わりに謝っといてもらえねえかな、和さん」
「それは無理。今度自分で謝んなさい」
厳しいこと言うなぁ。
俺がもう、ここに来るつもりないって分かるのかな。
「了解」
「じゃ、いってらっしゃい、ミキさん」
「いってきます」
丞さんは、部屋から出てくることは無かった。
終わった。
背中を押してくれて、ありがとう丞さん。
この香りに包まれてれば、十分守られてる気がして頑張れそうだ。
カランカランと扉を開けて、外に出る。
ここからは、ミキとして。
よっしゃあ、気合い入れていくか。
待ち合わせの場所は、繁華街の入口。
昨日入ったゲーセンの向かい側の噴水前。
遠くからでも柿谷柊吾だと分かる。
怖いぐらい人が周りにいない。
柊吾がオーナーをしている店はこの辺りだと6.7件あるらしい。
ヤクザより怖がられてそう。
「柊吾さん」
少し小走りで近寄る。
ゆっくりこちらを見て、腕時計を見る。
「すみません、お待たせして」
「全然時間前だし、大丈夫。」
白地に黒の柄の入ったセーター。黒のテーパードパンツに、黒のマーチン。
前回のセットアップよりは、緩いイメージのコーデ。
俺の見た目の若さに寄せたって感じか。