BeAST




「私が言ってるのは、弟が持ってるもの全部奪うわるーいお兄ちゃんの顔、かな」


慎矢は、兄貴が大好きだ。

それ以上に兄貴は慎矢が好きだ。

愛しすぎて憎悪に変わった。



「跡継ぎ、慎矢なんでしょ」



ガラッと雰囲気が変わる。


「正妻の息子だし、兄貴を信用しすぎる馬鹿な部分がなければ優秀だし。それに比べ、愛人の息子の柊吾さんは、弟の信用を得て、わるーいこといっぱいしてる。父親は全部知ってる」


足を組んで外を眺める。

知らない、あなたの表情なんて。


「君は、俺ら兄弟に何の利益があって関わる」



「利益しかないよ。まあ、私があなたに似てるってことは出会ってから知ったことですし」



「どのへんが似てるの?」



「綺麗なものが許せない。最初から綺麗なものでありたかったのに、気付いた時には烙印が押されてた。お前は別だと。生まれてこなくていい存在だと。誰にも愛されないと。誰が悪い?親のお前らだろ。そんなふうに足掻いたって何も変わらない。死んだ方がマシだ。でも、死にたくない。生きたい。生きることを許されたい。誰かに必要とされたい」



「……でも君は、愛されてるんだろ」



「うん。だから、変わったと思ってた。でも、そんなの勘違い。根本が違う。愛されて生まれてきた人間と同じなわけがなかった。1人を愛して、捨てられるのが怖い。けれど、皆に愛されても、孤独感が増すだけ。」



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