BeAST
立ち上がって、窓の傍に行く。
「丞さんの傷付いた顔見て、心が痛かった。でもそれと同時に、ホッとした。これが、本当の自分だって。人を傷つけることしか出来ないのが、自分だって。ねえ、分かる?柊吾さん」
振り向いた時、ふわりと包まれる。
「分かるよ」
丞さんと違う香りだ。
「俺は、シンが悲しむ顔が一番ホッとする」
やっぱりそうか。
「その時の罪悪感が、堪らなく落ち着く」
無機質な声。
それが本当か嘘かも分からない。
「いつか、この恐怖から逃れられる確証なんてない。だからいっそ死んでしまおうかとも思う」
今だからこそ、深く。
深くこの人を理解できる。
「俺より、長く生きててさ、やっぱそう思う?」
地声で聞けば、グッと力が強まる。
「そういう考えが強まるばかりだ」
「はは、しんどいな。……すげえ、しんどい」
柊吾の背中にしがみつく。
「一番自分が自分を許せない。許されたいのに、許そうとする人を一緒に汚してしまいそうで怖い。そんな自分が嫌で」
メイク、崩れちまう。
泣くな。
「ごめん、服汚すから、離して」
「いいよ」
「……もっと早く、会えればよかったのに」