BeAST
俺の頭を撫でる柊吾。
「…いいよ」
何年後かの自分を見ているようだった。
辛かった。
全部諦めた目。
でも一人ではいたくない。
シャットダウンして、本当の自分を押し殺すのに必死で。
自分を大切にできない。
人に優しすぎる。自分に優しくなさすぎる。
それは、1人でいたくない証拠。
でも感情に逃げ場はなくて、結局人を傷つけることで、気付く。
誰かと一緒にいることが、怖い。
1人が安心する。
矛盾してる。
「一般的に見て、柊吾、アンタは悪者だよ。弟を見えないところで傷付けて、悲しんでいるところを慰める。そうやって、洗脳していく。飼い続ける。酷い人だよ」
でも、それでも
「それにしか、行き着かなかったんだよね。無垢で何も知らない、兄という存在なだけで無条件で愛してくれる弟しか、居なかったんだよね」
悲しくて、悲しくて堪らない。
それでいて、愛おしくて堪らない。
腕の力が強まって、微かに肩が震えるのが分かる。
「なんでなんだろうな。……俺だって、普通に愛して愛されて、いつか誰かと死ぬまで2人で。そうやって生きていけると思ってた。なんでそんな普通のことが、こんなに怖いんだろう」