BeAST




ゆっくり、柊吾は俺から離れて、フロントに電話をする。


それ切って、また俺に近付いてくる。


頬と首筋に手を当てて、顔を傾けてキスをする。

ちゅっ、と触れるだけのキスをして、角度を変えて深く。


「なあ、俺、メイクぐちゃぐちゃ」


「綺麗だよ」


瞼にキスをされる。


「はは」


笑いがこぼれる。


「俺には、それがお似合いだって聞こえるな」


「そう?ひねくれてんね」


小馬鹿にしたような顔で俺を見る柊吾。


「お前には負けるよ」


そう笑って見せれば、儚げに笑う柊吾。

俺はその顔を引き寄せた。


その行為への心の痛みが、こんなに安心する。


ここだって、思ってしまう。


ずっと、揃わなかったピースが揃った気がする。


「わっ」


急に腰と腿に腕を回し、俺を持ち上げる柊吾。


「いや、重いだろ!歩くって!」


「はは、色気ないな」


全く感情の乗らない声。


「…っ」

ドサッとベッドに下ろされて、柊吾はすぐにセーターを脱ぐ。

脱いで直ぐにまたキスをしてくる。


キスをしながら、俺のカーディガンを脱がせて、ベッドの下に降ろす。


「ハルにも、こうしたの?」


ピクッと手を止める柊吾。


「あの子とはヤってないよ。ヤったように見せかけたら、すぐに信じたよ。あのとき俺、20だったし、中学生とは流石にヤれないでしょ」



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