BeAST



「ふふ、なーにそれ。良心ってやつ?」


「はーい黙ってー。」


笑う俺の唇を舐めて、カプッと口を塞ぐ。


そっか、ヤってないのか。

まあ、柊吾のしたことは許されることじゃない。

でもまだあいつらにはやり直しが効く。


早く教えてやらないとな。


締めつけから解放された胸。

流石にそれは恥ずい。

顔を逸らして、腕で目を覆う。


音も体温も。


「見てないとダメ」


腕を掴まれて、そう言われる。


「な、んで」


「今君のこと抱いてるの、俺だってちゃんと見てないとダメ」


「見てなくても…分かってる」


「分かるんじゃない。理解するんじゃない。もっと違う部分の話」



真剣なその目に、有無を言わせてくれる気はサラサラない。


「俺は、丞さんじゃないからね」


ピクッと体が揺れる。


意味が分かって、カァッと顔が赤くなっていくのが分かる。


ふふっ、と楽しそうに笑う柊吾。

本当の笑顔だったと思う。



「うわぁぁあ、悪党が開き直ってやがる!!!」


首に手を回して抱き寄せる。


「……見てるから、その名前禁句」


「大好きなんだ?丞さん」


「殺すぞマジで」


そんな楽しそうな笑顔は、どこか慎矢に似ている。

どうか、今の時間だけは、俺たちを解放して。



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