BeAST
「よし、こっちは片付いたから、話をしよう」
柊吾は慎矢たちの前のソファに座る。
「シン、お前は俺の事好きか」
柊吾の諦めたような目。
そう、柊吾は慎矢を捨てる。
囲って飼い慣らした犬を、捨てる。
傍から見たらそれは、救い。
「そんなん、決まってんだろ」
恥ずかしそうに俯く慎矢。
可愛いな、おい。
「そう。そうなんだよ。お前は俺の事好きなんだよ。俺がそうなるように、ずーっとお前が生まれた時から仕向けてた」
生まれた時。
柊吾が8歳の時から。
16年間。
「お前が大事にしてたもんを見えないところで奪って、慰めて、与える。お前にとって俺は、優しい兄貴。与えてくれる最高の兄貴。そうだろ?」
「は、何言ってっか分かんねえ」
「お前のおもちゃ、愛犬、大好きな使用人、彼女。次は何にしようか、考えてた。何を奪ったら、お前の悲しむ顔が見れるのか、考えてた」
酷い兄貴だよな。
許されることじゃない。
俺は立ち上がり、冷蔵庫を開けて水を貰う。
「貰っていい?」
「いいよ。食べたいものあったら、これで頼みな」
「さんきゅ」
柊吾から注文用のタブレットを貰う。