BeAST
皇は、俺を睨む。
「『あたしは馬鹿だ。慎矢を裏切って、漸を悪者にした』。最後の懺悔を俺に残して、自分を許せずに飛び降りた。」
興田春は、俺や柊吾みたいな人間と真逆。
混ぜるな危険、って感じだ。
「灯織が、あんまりお前をいじめるなっていうからさ。そろそろお前で遊ぶのも飽きてたし、捨ててもいいかなって」
そんなこと、俺言ってないけど。
「……んなの、言わなくていいだろ」
その言葉に耳を疑う。
は?
「兄貴が、俺のこと、良く思ってねえことなんか知ってた」
震えながら、拳を握りしめながら、声を絞り出す。
「周りが言うんだ。君のお兄ちゃんはいい人だけど、跡取りにはなれない、可哀想な子だって。ずっと、俺はその意味を知らなかった。兄貴は正妻の息子じゃない。ただそれだけで、親父は一緒だ。それに、兄貴は俺より優秀で機転が利いて、いつも冷静で、それでいて俺のことも気にかけてくれる」
ああ、負けるなぁ、これは。
「どこが、可哀想なのか、分かんねえよ。跡取りがなんだよ。俺は、親父がそんなすげえやつだとは思わない。親父の後釜なんてちっせえところに兄貴がハマるわけない」
涙が出る。
なんて可愛い弟なんだ。