BeAST
神尾環side
バンッと扉が開かれて、反射的にハルが反応する。
「あ!やっと来た!ねえ、灯織遅…い」
パイプ椅子から立ち上がり、入口の方を見る。
2つの荒々しい息遣いが聞こえる。
ハルは、固まってる。
「ハ…ル」
「しん、や…なんで」
『そっちにデカブツ二つ行く』
それだけ、連絡来たけど、僕にどうしろと。
入ってこないけど、入口で突っ立ってるのかな?
ハルの反応からして、きっと、ハルの恋人だった子とその親友くんかな。
ハルがよくうんざりした顔をするひおに話してた。
ひおが、ハルが来る日にケーキ持ってくるなんて言うから、おかしいとは思ったけど。
その2人が、ケーキってことでいいのかな。
「……んで、連絡してくれなかったんだよ」
悔しそうな、絞り出した声。
ハルが、俯く。
「いや……そりゃ、そうか。あんな兄貴がいるやつになんて、会いたくねえよな…」
お兄さん、か。
確か、ハルが飛び降りる原因を作った人だっけ。
「ちが、違うよっ、それは、違う……」
そんな会話をしつつ、ぬっとこちらに入ってきた子は僕を見る。
「……病室の名前、ハルじゃないから、思ってたけど…すんません、勝手に入って」
やっと僕を認識してくれる人が来てくれたみたい。
「あはは、いいよいいよ。僕のことは気にしないで?ひおからは聞いてるし」
「……え?なんで、灯織が」